五島列島最北端の島、宇久島。ここもかつては捕鯨で栄えた島。その捕鯨の跡を宇久島で追ってみた。
捕鯨の跡が色濃く残る宇久島
これまで五島列島の捕鯨については、「福江島とクジラ」と「上五島とクジラ」の記事でそれぞれの島での跡地を追っている。今回は宇久島での捕鯨について訪ねてみた。
宇久島資料館に展示されている捕鯨船の第二十一興南丸の模型。宇久島の歴史を語るときに捕鯨の歴史も欠かせない。
宇久平港に船が着きターミナルを出るとすぐに目に飛び込んでくるのが、台座に添えられた捕鯨砲だ。宇久に来る人達を出迎える捕鯨砲、さすが捕鯨で栄えた島だけのことあるとクジラに関する跡も多くあるかもと期待を抱かせてくれる。
この捕鯨砲はかつてこの地で捕鯨を操業していた大洋漁業から譲り受けたものとのこと。実際に使われていた捕鯨砲だ。第二次大戦後にピークのときは150名を超す捕鯨の従事者がいた。しかし、戦後42年経って捕鯨に関する世界情勢などからその歴史を閉じている。
神島神社に奉納された石灯篭
宇久島での捕鯨の歴史は古く、1680年(延宝8年)に鯨組を組織して始まったとされている。その後に日本で初めて南氷洋に捕鯨に出かける際に日本捕鯨株式会社より神島(こうじま)神社にクジラが乗った石灯篭が奉納されている。
灯篭の上にクジラが乗っている。航海安全祈願と捕鯨祈願をこめて奉納された石灯篭が現在も残っている。
鯨えびす
捕鯨の歴史が古い宇久島では、鯨に乗ったえびす様の祠が現在でもある。それが「鯨えびす」だ。宇久島の中でも特にクジラにかかわりが深かった堀川町の一角にその祠はある。
そしてこちらが鯨に乗ったえびす様。えびす様がしっかりと鯨にまたがっている。江戸時代から続いていた捕鯨で栄えた証だ。
鯨えびすに関しての解説板。
捕鯨の資料を展示する「浜方ふれあい館」
捕鯨に関する歴史や資料を展示する資料館も宇久島にはある。それが「浜方ふれあい館」だ。旧缶詰工場の建物を利用した資料館。レトロ感もある建物は宇久島でのインスタなど記念撮影にも最適なスポットになっている。
館内は決して大きくはないが、宇久島での捕鯨で使われた資料や写真などが展示されている。ここでしか見られない貴重なものも少なくない。
こちらは缶詰工場時代に実際に作られていたという缶詰のパッケージ。昔のデザインやロゴが当時の雰囲気を感じさせてくれる。
宇久島で発掘されたクジラの骨。捕鯨基地や解体場の跡だった場所から出たものだろう。
このクジラの骨が発掘されたのは、現在宇久島の行政センターのある付近からだそうだ。この辺りでクジラの解体などが行われていたのかもしれない。
「浜方ふれあい館」は、個人で運営している資料館。開館は基本的に週末の土日と祝日の午前9時から午後5時まで。しかし、平日でも事前予約をすれば対応も可能とのこと。ぜひ宇久島での捕鯨の歴史を実際に見学されることをおすすめする。
クジラを味わいたいなら鯨カレーを
宇久島でクジラを味わってみたいという方には鯨カレーがおすすめだ。メニューには、鯨カレーと鯨カツカレーがある。カレーに入っている肉には鯨肉が使われている。カツももちろん鯨肉を揚げたものだ。クセのない鯨肉がカレーに合っておいしい。手軽に食べられるカレーで鯨の味をご賞味あれ。
港ターミナルから徒歩10分ほどで着く「かっちゃん」で鯨カレーは食べることができる。