映画「男はつらいよ」の主人公である寅さんは、五島列島を二度訪れている。シリーズ第35作になる「寅次郎恋愛塾」の作品では新上五島町の中通島が舞台になっている。この作品で登場する青砂ヶ浦教会を紹介しよう。
青砂ヶ浦教会は樋口可南子演じるマドンナと出会う場所
「男はつらいよ」全48作中の第35作「寅次郎恋愛塾」で寅さんは上五島へと渡る。島でたまたま見かけたおばあちゃん(初井言榮)が転んだのを助けたのが縁でその日おばあちゃんの家に招かれ宴会になる。
しかし、その日おばあちゃんの具合が急転し、その夜に亡くなる。クリスチャンであるおばあちゃんの葬儀が教会で行われ、東京に出ていた孫娘の若菜(樋口可南子)が葬儀に駆け付け寅さんと出会うという下りから始まるストーリー。
映画の中の要となる舞台が中通島にある青砂ヶ浦教会だ。作品の冒頭と終わりに青砂ヶ浦教会でのシーンが出てくる。教会の中でのシーンもあるが、教会前では寅さんと若菜の語りやテキヤ仲間のポンシユウとの絡みなどがたくさん繰り広げられる。
現在の青砂ヶ浦教会は、1910年に完成。教会建築の父と称えられた鉄川与助の設計施工だ。イギリス積みのレンガ構造で教会内部はリブ・ホールド天井になっている。入り口の柱は頭ヶ島の石材が使われている。
煉瓦は佐世保から取り寄せたもの。当時は子供から女性まで総出で港からこの地まで煉瓦運びを手伝ったそうだ。
青砂ヶ浦教会は高台にあり、港を見下ろせる場所に立つ。映画の中でもこの港を見下ろす風景が背景に随所に出てくる。映画を見てからこの青砂ヶ浦教会に訪れると撮影の位置関係などがよりわかるはずだ。
この作品はタイトルが「寅次郎恋愛塾」とあるように寅さん自身の恋愛というより若菜に恋い焦がれる民夫(平田満)の恋愛指南役として寅さんが活躍する。この作品は35作目で「男はつらいよ」シリーズも後半に入ってきており、寅次郎自身の恋沙汰も落ち着いた頃だ。
民夫の恩師の教授役に二代目のおいちゃん役でもある松村達雄、東京のアパートの大家役に杉山とく子、おばあちゃん役の初井言榮と脇を固めている名優の演技も見どころの作品。御前様役の笠智衆もこのころはまだ元気。なにより若かりし頃の樋口可南子もきれいだ。
「男はつらいよ」では五島列島は二回舞台となっている。この作品と第6作「男はつらいよ・純情編」で福江島が舞台になっている。そのときも教会回りが舞台になっていて、「男はつらいよのロケ地になった玉之浦教会」にまとめてあるのでご参考に。
「男はつらいよ」全48作のなかで2回も舞台に選ばれている五島列島。これらの教会に行く前にはぜひ映画も見てみてはいかがだろうか。