人口減少が年々拍車がかかる日本だが、離島ではさらに人口減は加速している。人口が減ればなくなっていくもののひとつが学校だ。五島列島の福江島、奈留島での廃校になった学校跡地の一例を追ってみた。
廃校を利用した成功例・ノルディックヴィレッジ五島アイランズ
廃校になった校舎と跡地を利用した成功例として挙げられるのが福江島のノルディックヴィレッジ五島アイランズだ。2011年に廃校になった田尾小学校の校舎と跡地をそのまま活用して宿泊施設とレストランなどを運営している。
ノルディックヴィレッジ五島アイランズは、藤田観光が北欧のアウトドアブランド「Nordisk」を活用してグランピング施設を運営している。地元の有志で集うメンバーが学校跡地を整備してグランピング事業を探していた藤田観光の誘致に成功した例だ。
校舎は田尾フラットキッチンという名称でレストラン施設としても活用している。
校庭はグランピング施設が建てられ宿泊施設が整っている。水飲み場や用具入れなど学校の跡地をそのまま宿泊用の施設としても活用していて無駄がない。
島の環境とグランピングというアウトドア性がうまくマッチングした廃校再生の例ではないだろうか。海や山などの立地にある廃校であればグランピングという特性を十分に活用できそうだ。
この施設に関しては「ノルディスクヴィレッジ五島アイランズ&田尾フラット」の記事もご参考に。
132年の歴史ある校舎は記念館として利用
五島列島の奈留島にある船廻小学校は、明治7年(1874年)に創立された小学校。しかし、平成19年(2007年)に奈留小学校との統合のために閉校になった。
閉校を記念した碑が校内に建てられている。132年の歴史があっても人口が減れば閉校してしまうという現実を目の当たりにした。
現在学校の建物は、笠松宏有記念館として一般開放されている。
校舎の一階の教室では船廻小学校についての展示品がある。歴代校長の肖像写真や学校行事の写真などが展示されていて学校の歴史について知ることができる。
船廻小学校校歌歌詞と黒板に書かれてあった「ふるさと」の歌詞。最後の「ふるさとは心の中にありて」の一文からこの学校の卒業生の思いが伝わってくるようだった。
江上小学校・なくなってしまう校舎もある
世界遺産になった奈留島の江上教会の前にあった旧江上小学校の校舎。2018年7月に訪れたときにはまだ校舎は残っていた。江上小学校は、明治8年(1875年)に創立。この鉄筋校舎は昭和55年(1980年)に完成。しかし、平成10年(1998年)に奈留小学校との統合により123年の歴史に幕を閉じている。
2019年5月に再度訪ねたときには、校舎がすべてなくなっていた。2019年3月までに解体撤去されたそうだ。廃校後はこのように校舎は活用されずに撤去されてしまう例もあるということだ。
江上小学校が解体されるときに譲渡してもらったという江上小学校の音楽室にあった黒板。奈留島のカフェで活用されていた。解体のときには、足踏オルガンなど様々な備品が貰い手なく廃棄されていったそうだ。
島では廃校になっても土地活用がない場合などは校舎はそのままあり続けている場合も少なくないが、残念ながら廃校後は解体され更地になってしまうという末路もあり得る。
人口減による相次ぐ廃校は島だけではなく日本国中で起こっていくことだ。五島列島の廃校例からこれからの学校跡地の再生を真剣に考えるきっかけにしてみるのもいいかもしれない。